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「さくらおろち田舎ツーリズム協議会」は、尾原ダム周辺の雲南市温泉地区と奥出雲町布施地区・三沢地区において、「地域資源の活用やボランティアを取り込んだグリーンツーリズム」に取り組む団体です。

1 地区の現状と課題

(1)現状

  事業実施地域は、ヤマタノオロチ伝説が残る斐伊川上流域に整備された、尾原ダム周辺の雲南市温泉地区と奥出雲町布施地区・三沢地区である。これらの地区 は、昭和30年までは旧仁多郡布勢村と三沢村、温泉村であった。その後、温泉村は大原郡木次町と合併したため、現在は異なる自治体に所属している。当該地 域は、山地地形の谷筋に農地や民家が分散しており、かつては農林業が主たる産業であったが、近年は地域外の事業所勤務との兼業農家が増加している。
 地域内の世帯数895世帯に対して、農家戸数は357戸で、その内訳は専業農家71戸、兼業農家286戸となっている。

(2)共生・対流の現状

 事業実施地区においては、近年施設整備が進んでいる。雲南市温泉地区には斐伊川の治水目的の尾原ダムが平成24年度に完成し、その一画に道の駅「おろちの里」も整備された。
 また、奥出雲町布勢地区には温泉施設「佐白温泉長者の湯」が、三沢地区では交流拠点施設「みざわの館」がそれぞれ整備された。
 これらの施設整備に伴って、それまでほとんどなかった交流人口が大きく拡大され、地域の雇用創出効果も生まれた。
 ■道の駅「おろちの里」への入込数・売上(平成24年度)
  ○レストラン来店者数 15,579人 ○産直来店者数 37,939人 ○計 53,518人
  ○レストラン売上 17,797千円     ○産直売上 31,380千円  ○計 49,177千円
 ■「佐白温泉長者の湯」への入込数・売上(平成24年度)
  ○入込数 89,532人
  ○売上 32,520千円
 ■「みざわの館」への入込数・売上(平成24年度)
  ○入込数 1,840人
  ○売上 1,700千円

  また、NPO法人さくらおろちでは、都市農村交流や農村体験、農林業体験をはじめ、調理体験をしながら、さくらおろち湖周辺の食材を再発見するイベント等 を実施しているほか、尾原ダムを活用した実行委員会方式のイベント「さくらおろち湖祭り」などの各種イベントを積極的に行っており、当該地域でのイベント への参加者数は、平成24年度で約19千人であった。
 さらに、当該地域が出雲神話、特に、ヤマタノオロチの舞台となっていることを背景にした文化イベントである「オロチ伝説講演会(11月)参加者数:30人」や「オロチ伝説ゆかりの地めぐり(3月)参加者数:21人」等も行っている。

(3)課題

 ①地域経済の活性化と生きがいづくり
 各種団体・組織が様々な取り組みを行っており、そのことが参画している地域住民の生きがいづくりには結びついているが、地域経済全体の活性化には未だ至っておらず、今後は経済効果を生み出す仕掛けをどのように展開するかが課題となる。
 ②農産品を中心とした地域特産品の販売促進
 近年、当該地域内で道の駅や温泉施設が整備され、地域特産品の販売拠点として機能するようになった。今後は、当該地域内の農産物及び農産加工品のブランド化を進め、都市住民へアピールする戦略をどう組み立てるかが課題となる。
 ③地域文化の維持保全
 当該地域には、島根県指定無形文化財「槻屋神楽」が伝承されているが、少子高齢化の中で、このような地域文化をどう未来に継承していくかが課題となる。


2 地区の将来像

 ○都市住民の会員制によるグリーンツーリズムの推進により、当該地域のコアなファンを拡大する
 ○農家民泊や農家レストランの取り組みを促進し、利用者の増加(所得向上)を図る
 ○地域イベント(祭り、農作業等)を都市住民と協働で実施し、農業・文化の維持保全を図る
 ○地域自主組織が取り組みを主導し、地域活性化を促進する



3 事業の計画

(1)取り組みのポイント

 当該地はヤマタノオロチ伝説が息づく神話の舞台であり、古くから伝わる伝統文化を大切に守り続けている。また、たたら製鉄の一大産地であった地域にも隣接しており、雲南市として「たたらの里山再生特区」の指定も受けている。これらの歴史的・文化的背景のもと、地域自治組織等が活発な活動を行っており、これらの住民の主体的な関わりのもと、伝統・文化を含めた地域資源をフルに活用したグリーンツーリズムを展開する。これにより、都市農村交流を活発化させ、地域活力の向上と経済波及効果拡大につなげていく。


(2)平成25年度からの3ヶ年全体計画

○対象となる3地区で取り組みに関する説明会・意見交換会を実施し、農家民泊を提供していただける農家を募集して、「さくらおろち田舎ツーリズム協議会」として組織化する。参加農家については、島根県のグリーンツーリズム支援制度を活用し、農家民泊に向けた条件整備やおもてなしの研修等を行う。

○食の資源、農の資源、文化・歴史資源等を整理し、グリーンツーリズムのメニューに活用できるものを抽出して、来訪者に田舎体験を提供する商品を造成する。これを都市住民にPRし、参加者を募集して催行する。
 また、参加者へのアンケート調査等を通して改善点を抽出し、次年度以降の商品の充実を図る。

○商品の造成に当たっては、季節毎の体験メニューの充実を図り、年間を通したグリーンツーリズムの受け皿を作っていく。
 最終的には農家民泊の会員制度のしくみを構築して、グリーンツーリズム商品の定番化を図り、リピーターや参加者の拡大を図っていく。

○グリーンツーリズムのプロモーションにあたっては、広報パンフレット等のツール作成や、NPO法人さくらおろちHP内への専用サイトの構築、旅行会社との連携などにより、効果的なプロモーションを行っていく。

○グリーンツーリズムへの参加者をデータベース化することにより、リピーターの確保に努めるとともに、データベース化した会員へ地域産品のDMを送付し販売促進を行うなど、通年での経済効果の向上を図っていく。


(3)平成25年度計画


(1)地域資源の活用やボランティアを取り込んだグリーンツーリズム

①地域資源の整理
 当該地域は古事記・日本書紀・出雲國風土記に記された神話の舞台であり、数々の由来のある神社や祭りが残されているほか、伝統的な農村の神事が昔のままに引き継がれており、例えば新年のとんど祭なども大規模に実施されている。
 また、地域内には尾原ダム及びその関連施設(ボート競技施設・自転車競技本部施設)が整備されているほか、道の駅や温泉施設、自然博物館等の集客施設も集中するなど、古いものと新しいものが多彩に混在した地域である。
 これらの地域が有する歴史・文化・自然・食等のあらゆる資源について整理するとともに、グリーンツーリズムへの活用方法を検討していく。

②農家民泊提供主体の組織化
 対象地域である温泉地区、布勢地区、三沢地区で説明会を開催し、農家民泊に協力していただける農家を募り、「さくらおろち田舎ツーリズム協議会」の農家会員として登録する。これらの登録農家会員に対し、農家民泊実施の際の法的なハードルを下げることでグリーンツーリズムを促進する島根県の支援制度「しまね田舎ツーリズム推進協議会」の「宿泊・調理部会」への加入を促し、農家民泊の体験及び衛生水準維持に向けて求められる項目の遵守等を徹底する。
 また、参画農家を中心に、先進地視察やおもてなしに関する研修等も併せて行っていく。
 具体的な体験メニュー等に関しては、農家会員と協働で検討を行う。


4 関係省庁事業との連携内容

 雲南市は「たたらの里山再生特区」の指定を受けている。これは、中山間地域が抱える重要課題の解決を図るため、地域全体で里山を再生することを目標としており、地域内自給力を高め、経済的にも自立度を高めることを目指している。具体的には、「里山のエネルギー利用の推進」「里山の食糧供給機能の復活」「里山の小規模多機能自治への挑戦」を掲げており、集落やコミュニティ等の小規模な自治による地域資源を活かした地域経営の展開等により、中山間地域で生きることの豊かさを実感し、自立していくこととしており、本事業とも通じるものがある。
 これらの取り組みとも連携を図りながら事業展開を行っていく。



5 都道府県・市町村事業との連携内容

 島根県では、「神々の国しまねプロジェクト助成金」制度を創設し、①“「しまね」の魅力再発見”事業助成金、②“地域の歴史文化イベント”事業助成金、③“神々の国しまね”プロジェクト観光誘客事業助成金等によって、観光や文化の振興、地域資源活用等を支援している。また、神話ゆかりの地に観光客を誘客する取り組みを支援する観光素材造成事業費支援補助金等、観光・交流を積極的に後押ししている。
 当該地でのグリーンツーリズムの取り組みを進めていく中で、これらの事業を取り入れるなど、連携を図っていく。

6 3年後に期待される効果

○都市農村交流が促進されることにより交流人口が増加し、地域内集客施設(道の駅おろちの里、佐白温泉長者の湯、みざわの館等)の入込数の拡大が見込める。
○施設入込数の拡大に伴って、各施設の売上額の増加が見込める。
○交流人口の拡大に伴い、地域農産物・農産加工品の販売額の増加が見込める。
○住民が、都市農村交流の取り組みに参加したり、農家民泊を受け入れることによって、生きがい対策や集落の活性化につながる。
○地域全体として、来訪者に対し「おもてなし」精神が醸成される。
○祭りや神楽といった地域文化継承の機運が盛り上がるとともに、郷土に対する誇りが醸成される。